『美に入り彩を穿つ』 歌詞の考察(妄想)

※この記事は前のブログの最後の記事を書きなおしたものです。

 

 

羽衣小町のユニット曲、『美に入り彩を穿つ』
和ロックなテイストで強い恋心を歌う格好いい曲です

最近デレマスにハマったんですが、単純に曲として個人的にベスト5に入るくらい好きな曲です
ですが歌詞を聴いていてちょっと思うことがあったので今回はそのことについて書きます


まず素直に歌詞を読んでいくと、「恋心に目覚めた少女が覚悟を決めてその想いを意中の人に届ける様」を書いた詩のように思えました
そこに愛の普遍性、永久性、神秘性などといった色々な要素を混ぜ込み、不思議な世界観を併せ持つ、だけど共感してしまう魅力的な歌詞になっていると思います

ただそこでちょっとした疑問も出ました
それは曲名だけでなく歌詞にも度々出てくる「美に入り彩を穿つ」という言葉の意味です

言うまでもなくこの言葉は「微に入り細を穿つ」という慣用句のもじりです
言葉の意味は「非常に細かいところまでゆきとどく」

では一体、何が「非常に細かいところまでゆきとどく」のでしょうか
そしてなぜ美、彩の字があてられているのでしょうか

そこを考察することで、歌詞中に登場する「少女」がどのような人物で、どういう恋愛をしようとしていたのかがより具体的に見えてくるのではないか、と思ったので今回記事として取り上げてみることにしました



さて美彩自体の意味について考える前にもう少し歌詞全体を掘り下げてみます


歌詞の世界観について考えてみます
全体にわたって現代のような、遠い過去のような、はるか未来のような、そんなつかみどころのなさがありそれがこの曲の神秘性を表しているかのように感じます

次に登場人物について
この歌詞には「君、少女、あなた」と人物を指しているであろう言葉が3つ出てきます
そしておそらくは君=少女であり、あなたとはその少女の思い人なのだろうと考えられます

ただ気になるのは、登場人物が少女とあなたの二人だけなのだとすると、世界観として遠い過去、現在、はるか未来を想像させる必要があるのかは疑問に感じます
少女の恋を語るのならばそれに伴う時間の経過は「一夜で惑う少女を綺麗にかえるもの」の一節にほんの少しの過去と未来を示すだけで充分なように思えます
仮にその後の二人の未来を暗示するための多少オーバーな表現として「八千代の果ても」という表現を用いたのだとして、今度は「古よりの巡る縁」という過去表現にもオーバーさを感じます
前世からの二人の縁があるのだというのならば、なぜ少女は一夜での変身を遂げる必要があったのでしょうか

もしかしたらこの歌詞に出てくる登場人物は二人だけではないのかもしれません
たとえば大きな世界の流れの中で運命が廻り、縁をもつ魂が生まれ変わっても巡りあう、そんな壮大な歌詞なのでしょうか
私はこの曲を聴いていてふと、心中を表した歌詞なのではないかとも何度も思わされました

ですが、それにしてはなんというか生命の躍動、生きるための力に満ちすぎている気がして、心中説は浮かぶたびに消していました
「誘う風に髪をほどき いざ尋常に」
「濡れた袖はそのままに 推して参りましょう」
死を望む人間の決意としては熱量が高すぎると思います
どちらかというと、これで終わりにはしないという決意の表れのように私には感じます


そこで再び歌詞全体を観て、他に登場する人物はいないかと探してみることにしました
二番の歌詞の頭の部分です
「花簪 髪に挿して思うわ 永久の夢」
「一番星 藍に染まる空に激しく身を焦がす」

この二節は「美に入り彩を穿つ」を歌う羽衣小町の二人
小早川紗枝塩見周子、それぞれ二人のソロ一曲目の歌詞を彷彿とさせる詞になっています
これを頭に入れることで二人とこの曲の世界がリンクしていくように感じます
そして、それぞれに対応する部分は何故かソロ曲のときとは表現していることが異なっているのです

花簪で紗枝は「長い夢から覚めてしまうようで」「次の千年へ夢を紡いで」と夢の終わりの儚さを歌うのに対して、美彩では花簪を髪に挿すことで「永久の夢」に思いをはせるようになっています
また青の一番星で周子は「のんびりとゆこう」「夢に出会うその日まで流れゆこう」と自然体で無理をせずありのままでと歌うのに対して、美彩では一番星として「激しく身を焦がす」と目標へのまさに身を焦がすような強い思いを語っています
俗に一番星とは金星を指す言葉ですが、金星は恒星ではなく惑星であるため太陽の光を反射して輝くことはできても「激しく身を焦がす」ように自ら輝くことはできません

なぜこのようにユニット二人それぞれの詞を改変して二番の頭に入れたのでしょうか

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この曲のタイトルは『美に入り彩を穿つ』
慣用句の「微に入り細を穿つ」のもじりです
曲のテーマともいえる曲名をシンプルなものではなく、あえてぱっと見で意味の通じにくい当て字のもじりにしたのは、歌詞をストレートに読む以外の可能性を提示していたからではないでしょうか
そしてそれに気付かせるきっかけこそが、二番の頭のユニット二人それぞれの詞の改変なのではないでしょうか

ということで歌詞内の第三の登場人物が浮き彫りになってきます
それが、曲の世界とリンクした小早川紗枝塩見周子の二人です
歌詞の世界観に登場人物として、「君、少女、あなた」「小早川紗枝塩見周子」が揃ったわけです

ただこれでもまだ世界観はいぜん分からないままです

そこで、「小早川紗枝塩見周子」がそれぞれの詞を歌うことで、何を「少女」と「あなた」に伝えたいのかを掘り下げていきます
先ほど書いたとおり、二番の頭の歌詞は、「それぞれ二人のソロ一曲目の歌詞」を彷彿とさせる中身です
この一曲目とは、アイドルとしてデビューして最初の曲。つまりデビュー曲です
二人それぞれのアイドル像を歌ったデビュー曲をその表現を変えはしたけども引用した、というところが大切な気がします
またこの美に入り彩を穿つという曲は二人が羽衣小町としてユニットを組んだ時のデビュー曲でもあるわけです

つまりこの曲では「デビュー」を表している一面があるのではないでしょうか
それはシンプルに「恋」のデビューでも構いませんし、デビュー曲を歌詞に重ねた二人の姿を想ってアイドルとしての二人それぞれの「デビュー」でも構わないと思います
さらに言えばもっと他のデビューと置き換えても良いと思います

ただ、個人的には「アイドルとしてのデビュー」として考えてこのまま書き進めたいと思います
「花簪」「青の一番星」そのどちらも、紗枝と周子の内面までも含めてどういったアイドルとして進んでいきたいのかを歌った歌詞だと思います
その部分を大事にしたいからです


纏めていきます
「紗枝と周子」が「少女」や「あなた」へ「アイドルとしてのデビュー」とはどういうものかを伝えていく詞
これが『美に入り彩を穿つ』という曲の一面なのではないか、というお話です
美に入り彩を穿つという言葉の指す意味については最後に。

歌詞中に出てくる言葉を当て字のようにして読み替えながら考察していきます

私の考察ではこのような置き換えです(頻出部分)
恋、愛=アイドルやそのファン、そしてその想い。アイドルのアイは愛です
夜=ステージやアイドルとしての活動。日の出ている普段とは違ってステージ、アイドル活動といった非日常の象徴としての夜のイメージ
巻物=上記それらをまとめた記憶や記録

一番の頭の部分では、まだアイドルという世界について知らないいとけない少女への語りかけでしょうか
色鮮やかなアイドルたちの輝く姿の記憶を、いくつも魅せ、一人の少女をアイドルという世界への恋に落とします

その憧れは少女自身がアイドルになりたい、輝きたいと思わせるに至り、少女は髪をほどいて決意を固めます

そして迷いを捨てた少女は憧れの舞台へと飛び出します
想いを紡ぎ言の葉にのせ、「歌」として形にするのです

その少女がアイドルとして積み上げていった全ての記憶はファンの心に永遠に永遠に残っていきます
それは数多の墨絵の龍(イコール偶像、イコール他のアイドル)たちにも決して負けないものです
少女の指がふれたことで彩られたのはなんだったのでしょうか
彼女自身の心の中の世界、そしてたくさんのファン一人ひとりの心の中の世界ではないでしょうか
そしてその思い出はずっとずっと残っていくのだと思います

そしてそれはいつか終わる夢物語などではなくきっと永久に続く夢であり、その夢によって自らがまるで恒星へと生まれ変わったかのように己を奮い立たせて燃え上がらせ光り輝いていくのでしょう

川が流れるかのように時は流れ過去の記憶になったとしても、アイドルとしての少女をファンが思い出すときには、張り裂けるほどせつなく恋しい思いをそのファンが抱いてくれますように

そんな想いを胸に抱き続け、一生懸命にきらびやかで美しいトップアイドルになるために進んでいきましょう

今に至るまでにたくさんのアイドルがいて、皆が進んできた道のその先にあるトップアイドル( 蒔絵の鶴)、それすらも超えるほどに

少女と周りの世界を彩っていくのは

アイドルとしてみんなでともに歩んでいく日々すべてでしょう


そして美に入り彩を穿つとは
「アイドルとして世界や人々のこころのすみずみに彩りを行き届かせる」
といった意味なのだと私は解釈しました


一人の「少女」がアイドルを目指し一夜で変わり、あなた=ファンの心のすみずみまで彩りを与えるお話です

はじめ少女は彩を与えられる側でした
(さぁ 美に入り彩を穿つ 君の心模様)

様々なアイドルの考えにも触れ、朧月夜、桃源郷といった不確かだけどもあると言われる憧れの場所へ、諦めずに一歩一歩進んでいきます
(さぁ 美に入り彩を穿つ 夢は朧月夜
ほら 夜風に遊ぶ琴の調べは 桃源郷)

そしてさまざまな活動を通して成長していくにつれて、あなた(ファン)へ彩を与える側へと、本当のアイドルへとなっていったんですね
(美に入り彩を穿つ 君の 恋絵巻)


このような一連の物語を羽衣小町の二人は歌っていたのだと思います。
そして歌には『お願いシンデレラ』などのように、今頑張っている子、それを見て自分も頑張ろうとしている子たちへのエールの思いが込められているのではないでしょうか

元の慣用句『微に入り細を穿つ』はたゆまぬ努力を続け自身に妥協を許さない紗枝と、自分の事だけでなく周囲の事にも気を配れる周子の二人にぴったりな言葉だと思います

という訳で『美に入り彩を穿つ』の歌詞考察でした



~余談~
羽衣小町は二人とも京都出身です
京都といえば都市伝説的な京都独特の遠回しな裏とクセのある言い回しを思い出し、美彩も実はストレートな中身じゃないないんじゃないか……といった妄想から入った考察でした

でも周子は自由人的なムード―メーカーでありながらも周りの事を一番よく見ている人だったり、紗枝はほんわかとした見た目とは裏腹にアイドルの活動に真摯で、自身に妥協しない芯の強い子だったりと、羽衣小町自体が良い意味で二面性のあるユニットだなと思っていたので面白い考察ができたと思います

本当につい最近デレマスに触れたばかりなので、今回の更新をきっかけにして羽衣小町についてももっと深く触れていけたらいいなと思ってます(2018/10/05)


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『花簪』『青の一番星』の歌詞の改変と当時は書きましたが、それぞれの曲をさらに聴いて今は考え方が変わりました。それぞれの曲では伝えたい主題を少し婉曲に書いているのではないか、そしてそれをストレートな表現に変えたのが美彩の該当部分の歌詞なのではないかと今は考えています。このこともいつか記事にしてみたいです。

婉曲な表現をストレートに置き換えるという意味では今回の考察の破たんにはなっていないかなと思ったのでそのまま記事を引用しています。